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罪の意識

始めに 

諸事情により文中には特定の固有名詞の記載は控えさせて頂いております




日光のソコに行きたいと言い出したのは妻だった

私は『ついにその日が来たか』と心の中で呟いた

妻は今までそこには行った事がない

しかし私は小学校の修学旅行で訪れたことがあるのだ


いつかまた行かなければならない

そんな宿命を負って今まで生きてきた

実に34年ぶりに約束の地へと降り立ったのである




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出来る事なら忘れてしまいたかった約束

しかし34年間その固有名詞を耳にするたび、

あのおぞましい約束がフラッシュバックするのである


照明もない薄暗く古い建造物があった

そこには一人のあどけない少年がいた

少年は屈託の無い笑顔を私に向け一方的にこう言った


『いつか大人になったらまたここに来てボクを見つけて 絶対約束だよ』


ちょっと待ってくれ 一体何の事だ と言うか君はどこの誰なんだ?

少年の胸元に眼を落とすと小学校の名札があり

そこに書かれた名前はなんと私自身であった

おいちょっと待て そんな事やめろ おい・・・ 


そんな白昼夢を何度となくみてきた

すると私の記憶の奥底から断片化したビジョンが甦るのである


古い建造物の格子から右手を突っ込み、見えない裏側に感覚だけで何かを記した

何を使って記したかはよく覚えていないが何十年経っても風化しないという自信があった

少なくとも『鉛筆はすぐ消える』という想いが子供時代にはあったのでそれではないと思う

それ以外の筆記用具なのかクギとか何かの尖った物なのか・・・

とにかく通常では人の眼に触れない箇所である

目印は頭上の『猫』だった


まだ若いうちは何を使ってどこに何を記したという記憶もあったかと思う

しかし長い年月と共に私の記憶もゆっくり風化してきてしまったようだ


今の私には罪の意識がある 残念な事に子供の頃は無かったようだ

後に世界遺産登録されるほどの歴史的建造物に、34年前私は一体何をしたのか

何をしたのかハッキリした記憶がないのに罪の意識はあるという事なのだ

この際どうしてもハッキリさせたかった


妻に付き合いゆっくり観覧してはいるが気になるのは『猫』の事だけだった

そしてついにあの『猫』を案内する看板を発見した

私は神妙な面持ちでゆっくり歩み寄って行った

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『ちょっと、 上だよ』

へ? な、何が?


妻に呼び止められ一瞬何の事か解らなかったが驚いた事に頭上にはあの『猫』がいた

私はうっかり気付かずに通過するところであった

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え?な、何で? え? そんな馬鹿な?・・・・

しばしうろたえた 

他の観光客から見たら異様にうろたえているただの不審者と映ったことだろう

何故ならそこは私が見てきた約束の地のビジョンではなかったのだ

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猫の下には格子と壁があるはずだった そこに何かを記したはずだったのだ・・・

あのビジョンは絶対にここではないと断言できる状況だった


『(これの他に)まだ猫いるっけ?』

小学生にも笑われそうな質問を妻に投げかけた


しばらくして状況を理解し始めた

そうか あのビジョンは夢だったんだ なんだ・・・

長年そんなものに捕らわれていたのか

なんだよ畜生 今までのオレの罪の意識返してくれよ


どこどこの学生が世界遺産に落書き とかのニュースを見る度に胸が痛かった

社会的見解とか関係なく、造った人達それを維持してきた人達へ対しての罪の意識であった

その罪自体が幻だったとは、呆れると同時に何とも言えぬ開放感に包まれるのだった

気持ちがすーーっと楽になり 何度も安堵のため息がこみ上げてきた

来て良かった いや、もっと早く来るべきだった



その後は普通の観光客に成り下がり(成り上がり?)普通に歴史的建造物を眺めて楽しんだ

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狛犬とKillerのツーショット撮ったり
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つい最近テレビでみたやつだ オランダから献納されたアレだ

葵の紋が逆さまになってるんだがあまりの出来の良さに ってヤツだね

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素晴らしい建造物ばかり 

子供の頃はあまり感じるものは無かったが大人になって行くと結構感動するものだ


あらかた見物も終えそろそろ宇都宮へ向かおうかと思い始めた頃

ある建造物の前で少年に呼び止められた気がして立ち止まったんだ


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『クスクス・・・違うよ 目印は猫じゃなくて猿だよ』


背筋が凍る思いだった

確かに頃合のいい格子もある

そんなまさか・・・


私は反射的に格子に手を突っ込みカメラのシャッターをきった



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しまった フラッシュが点かない

カメラの設定をやり直してもう一度撮ろうとしたが妻に止められた

あまりにも不審行為だと 確かにそうだ オレがやると更に怪しさ倍増だ

しかも『何をしているんだ』と聞かれて

『いや、多分昔ここに落書きしたのでそれを確認する為に写真を撮っただけです』

って本当の事を説明するのもかなり気が引ける状況だ


ちょっと待ってくれよ なんなんだよ・・・

正直な話、もう何が何だか解らない 解らないのである

やったのかやってないのかさえ解らない



家に帰ってきてからもう一度記憶を手繰り寄せてみたが

猿のところって内側に人が入れる感じでしょう 

そういうとこは選んでないと思うんだよな

記憶の中ではうるし塗りの赤い格子で

建て替えでもしない限り人目にはつかない所だった気がするのだ

それもハッキリ断言は出来ないのだが



どうだろう 

この際 やってなかった という事で丸く治めないかオレ

あれは夢だった そう言われてみたらそうだ そんな気がするんだ

子供のオレにそんな度胸は無かったはずなんだ 

もうこれ以上引きずらなくていいだろう

そうさ


34年前オレは何もやってないよな



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昔話
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日記
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